マーガリンは体に悪いって本当?間違った情報で恥をかかないための健康知識

10月 23, 2019食べ物マーガリン, 牛乳・乳製品, 都市伝説, 雑学・教養

マーガリンは体に悪いって本当?間違った情報で恥をかかないための健康知識

巷で言われ続けている「マーガリンは体に悪いから食べちゃダメ!」という話。

十数年前から言われ続け、いまだに悪い噂が絶えません。

更には、神経質になりすぎ!食べても問題ない!という意見も出始めが混ざり合い非常に判断がしにくいですね。

長年語られ、都市伝説の一つになりかけている「マーガリンはヤバイ説」は本当のことなのでしょうか?

火のない所に煙は立たぬと言いますし、悪い噂が絶えない理由もあるはずです。

そこで今回は「マーガリンは本当に体に悪いのか?」を見ていきましょう。

バターとマーガリンの違いは?

バターとそっくりのマーガリンですが、似ているようで実は違います。

まずは、バターとマーガリンの成分の違いを見ていきましょう。

バター(無塩)100g中

エネルギー:763kcal
タンパク質:0.5g
脂質:83.0g
炭水化物:0.2g

引用:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

マーガリン(ソフトマーガリン)100g中

エネルギー:796kcl
タンパク質:0.4g
脂質:83.1g
炭水化物:0.5g

引用:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

あまり主成分に違いはありませんね。

「雪印メグミルク」のサイトにはこうあります。

バターは牛のミルクの脂肪分を撹拌操作により塊状に集合させたもの。つまり乳脂肪から作られます。一方、マーガリンは簡単にいうと、食用油脂等の原料を混合し、練り合わせた加工食品です。原料となる食用油脂はコーン油、大豆油、紅花油などの植物油脂が主体となっています。

引用:マーガリンとは?

つまり「バターは動物性」「マーガリンは主に植物性(動物性もある)」ということです。

マーガリンはバターの代用品として作られたものなので、入手手段が限られる牛乳より、簡単に手に入る油脂で作ったほうがコストも安く量も作れると考えると納得です。

更に「バターを混ぜて風味を生かしたマーガリン」や「フレーバーを混ぜたマーガリン」など多種多様な製品が開発されています。いわゆる「ファットスプレッド」ですね。

さて、マーガリンがどのようなものかわかりました。

ここからが本題です。

都市伝説のように語られていることをそれぞれ見ていきましょう。

マーガリンはプラスチックって本当?

いまだに言われ続けている「マーガリンはプラスチックである」という話。

インパクトが強く一度は聞いたことがあると思います。

が!!

これに関しては、デマであると言って問題ないでしょう。

 

マーガリンの脂肪分子がプラスチックの構造に似てるって聞いたけど?

残念ながら全く似ていません

 

『マーガリンはプラスチック』

正確には『マーガリンに含まれるトランス脂肪酸がプラスチックに似ている』という話は、そもそも不明瞭な点が多いです。

プラスチックと言っても様々ありますが…真っ先にイメージするのは「合成樹脂」だと思います。

合成樹脂とは、人為的に作られた高分子化合物の総称です。

高分子化合物というのがポイントで、小さい構造がいくつも繰り返し結合した形…

簡単に「分子(物質の最小単位)が規則正しく大量にくっついて構成されたもの」と考えてください。

一方、マーガリンの脂肪酸は高分子化合物と言えないほど分子数は少ないです。

…何が言いたいの?

つまり、全く似ていないってことです

 

初めに言い出した人は、何をもって似ていると思ったのか不思議ほど似ていないのです。

まだ、お米に含まれるデンプンはプラスチックと構造が似ているといったほうが説得力あります。

マーガリンがプラスチックと言われる理由は誤訳のせい

なんでそんなデマが広まったの?

誤訳で広まった可能性が高いよ

英語のプラスチック(plastic)は、複数の意味があります。

その中で注目すべきは「プラスチック」「塑性(可塑性)」の意味があることです。

感のよい人はわかったと思いますが、ポイントは「塑性(そせい)」です。

「塑性」は簡単に言うと、力を与えても元に戻らない性質のことです。粘土をグニッと潰しても元に戻らないのと同じです。

なので「マーガリンは塑性がある」という英文を「マーガリンはプラスチックである」と間違え広まってしまったと考えられます。

ちなみに
バター・マーガリン・ショートニングはどれも塑性を持つ油脂製品なので「可塑性油脂」とも呼ばれています。

マーガリンは腐らないって本当?

真偽はおいておいて「マーガリンは腐らない」という話は有名ですね。

マーガリン=プラスチック疑惑に拍車をかけた要因の一つです。

冒頭で書きましたが、マーガリンは風味・食感をよくするため様々な成分が配合されています。

種類により、油脂の量・タンパク質の違い・水分量など異なります。

要は「マーガリンとひとくくりにするには対象が多すぎる」のです。

 

例を挙げるなら…
油脂100%で作られたマーガリンがあったとしたら、酸化するけど腐敗はしません。
※油は腐敗しません。

逆にタンパク質などが多いマーガリンは問答無用で腐敗します。
※カビ・菌のエサになるものが多いほど腐りやすい

つまり…どういうこと?

普通に腐るから気を付けてね

種類によりますが、マーガリンは腐りますしカビも生えます。ほかの食品と同じです。

マーガリンは腐らないと思い込んで常温保存を続けたりや古い製品を食べたりしたら…

最悪の場合、食中毒で病院行きになります。

 

マーガリンの腐敗について実験してる人がいたけど?

実験…たまたま油脂が多いマーガリンを使ったのでしょう。

油は腐りません。その為、油脂の比率が多いタイプのマーガリンは腐りにくいと言えます。

「マーガリンは腐らないのか?」を夏休みの自由研究の題材としても良いですが、少なくとも色々な種類を同環境において実験しましょう。

試行回数が少ないor実験環境がきちんとしていない状態で「腐らなかったから危険!」というのはナンセンスです。

マーガリンのトランス脂肪酸が危険って本当?

耳にタコができるほど「トランス脂肪酸は危険!」と聞きますね。

トランス脂肪酸を簡単に説明するのは困難なので「油脂を構成する脂肪酸の一つ」とザックリと覚えておきましょう。

一つといっても、組み合わせにより膨大な種類があり、あくまで「トランス脂肪酸」は総称です。

 

さて、本題に戻りますが

「マーガリンのトランス脂肪酸は危険」という話は半分正解で半分間違いです。

 

「トランス脂肪酸」は過剰摂取することで心筋梗塞など心臓病のリスクが高まると言われています。

なので「トランス脂肪酸は危険」は概ね正解と言ってよいでしょう。

 

 ですが「マーガリンのトランス脂肪酸」が危険。この部分は間違いです。

 

でも「水素添加」のせいでマーガリンはトランス脂肪酸が多いって聞いたよ!

問題は水素添加じゃないし、害のある食品を知るべきでしょ?

マーガリンを悪者にする前に、普段食べているものを疑ってみましょう。

大切なことは「マーガリン以外にもトランス脂肪酸は含まれる」です。

 

また、水素添加でトランス脂肪酸が作られるわけではなく…

水素添加は「高圧・高温化で行われるため、トランス脂肪酸が発生してしまう」といったほうが正しいです。

「揚げ物はトランス脂肪酸が多い」と同じことです。

バターにもトランス脂肪酸は含まれている

稀に「トランス脂肪酸は人工的に作られる」という話を聞きますが…

トランス脂肪酸は天然でも存在するものです。

天然の不飽和脂肪酸は、通常シス型で存在します。しかし、牛や羊などの反芻(はんすう)動物では、胃の中の微生物の働きによって、トランス脂肪酸が作られます。そのため、牛肉や羊肉、牛乳や乳製品の中には微量のトランス脂肪酸が天然に含まれています。

引用:農林水産省 すぐわかるトランス脂肪酸 (http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_wakaru/)

もちろん、乳製品であるバターにもトランス脂肪酸が含まれています。

じゃあ、マーガリンを避けてバターを使っても意味ないってこと?

意味はなくありませんが…

バターとマーガリン。トランス脂肪酸が少ないのはどちらか?というと…

メーカーにより異なるとしか言いようが無いです。

 

最近ではトランス脂肪酸が少ない製品を開発しているメーカーが多いです。

そのため、A社のバターよりB社のマーガリンのほうがトランス脂肪酸が少ないなんてことがあり得ます。

一つ言えるのは「公表されている成分表を見比べることが大切」です。

これは、すべての食品に言えることです。

しかし、それには一つだけ 問題 があります。

マーガリンは欧米で規制されているって本当?

「成分表を見て選ぼう」と言いましたが…

残念ながら日本ではトランス脂肪酸の表示義務はありません
※トランス脂肪酸に限らず、不飽和脂肪酸・飽和脂肪酸・コレステロールの表示義務も基準値も無い

よく見る「マーガリンは欧米で規制されている」と関連しているので一緒に解説します。

 

先に書いておきますが、欧米では基準値があるだけで流通しています。

脂質の多い食事が多く飽和脂肪酸・トランス脂肪酸の取りすぎを避けるため、一部の国では表示義務・基準値を設定しています。

その為、マーガリンの流通が規制されたでなく…

「マーガリンを含めた一部の食品に表示義務・基準値が作られた」というべきですね。

「欧米で規制されている」だと誤解を招く書き方です。

なんで日本には表示義務も基準値もないの?

日本人の食生活だと摂りすぎる心配が少ないからです

脂質を多く摂らない国では、表示義務も基準値もありません。

身体に影響があるほど偏った食事をしない国柄なので「アナタは神経質になるほど不健康な食生活はおくっていませんよ」ということです。

いま日本でトランス脂肪酸を少なくした製品が販売され広まっているのは、どうしても気になる人に向けた企業努力の賜物といったところでしょうか。

もちろん、自分の身体を大切にするのは良いことですが、神経質になりすぎると返って不健康になってしまいます。

結局マーガリンは体に悪いの?

現段階ではマーガリンは体に悪いと言い切れません!しかし、これはバターも同様です。

食べ過ぎはダメですが、日常的に食べる分には問題ないでしょう。

脂質が少ない食生活を送っている日本人には影響が少ないです。

それより、日本人は偏った食事と塩分の摂りすぎを注意すべきでしょう。

自分の身体は自分しか守れません!

常日頃からバランスの良い食事を心がけ、多くの情報から正しい情報を見つけ出す能力が大切です。

参考文献—-
雪印メグミルク:マーガリンとは
農林水産省:すぐわかるトランス脂肪酸(http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_wakaru/)