サイコパスって一体何者?「サイコパスの特徴」をゲームに例えて理解しよう

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サイコパスとは、パーソナリティ障害の中で、罪悪感や共感性の欠如など特定の問題を持つ障害「反社会性パーソナリティ障害(ASPD)」。その障害を持つ人が「反社会性パーソナリティ障害者」と呼ばれています。

反社会性パーソナリティ障害(者)を一般向けに分かりやすく表現した言葉が「サイコパシー」または「サイコパス」です。

 

世間では、逸脱した人格と反社会性へのレッテル張りとして使われることが多いです。

しかし、「サイコパシー」は特定の側面を持つ人格傾向であり、犯罪者ではないと知っておきましょう。

後ほど説明しますが、社会の中で活躍するサイコパシー傾向が高い人物は存在します。

 

…ありがちな説明をしましたが、漠然としてわかりにくい!!

 

今回は、サイコパスをゲームに例えて「サイコパスの特徴」「サイコパスへの偏見と疑問」「見極める方法の有無」を解説します。

それでは見ていきましょう。

サイコパスの特徴

人格障害に関して、明確な定義はありません。

一般的に用いられる犯罪心理学者Robert D. Hareによるサイコパスの特徴は次の通りです。

・良心が異常に欠如している
・他者に冷淡で共感しない
・慢性的に平然と嘘をつく
・行動に対する責任が全く取れない
・罪悪感が皆無
・自尊心が過大で自己中心的
・口が達者で表面は魅力的

特徴について様々な意見がありますが、現在はチェックリストによる診断基準のみで判断されます。

この情報だけでは、ぼんやりとした人物像しか浮かびませんね。

 

アメリカ精神医学会によるDSM-5(診断および精神障害のマニュアル統計 第5版)の診断基準によると

18歳以上であり、次の7つの項目のうち15歳までに3つ以上示している必要がある。

・社会規範や法律を尊重しません。法律違反や社会的境界を繰り返し行う。
・自分の利益の為に人を騙し欺く。
・長期計画が立てられず、衝動的。また多くの場合、結果を考慮しない。
・暴力を伴う苛立たしさと攻撃性。
・自分や他人の安全性を考慮しない。
・個人的/職業上の責任がとれない
・罪悪感や良心が無い

※この診断は専門家が行うものであり、個人が出来るものではありません。

 

平たく言えば、サイコパシー傾向が高くても反社会性が無ければ反社会性パーソナリティ障害(サイコパス)として扱われないってことです。

サイコパスをチェックする方法は?

チェックリストによる「PCL-R」と自己報告型の「PPI-R」という2つの方法があります。

PCL-Rとは?
Psychopathy Checklist-Revisedの略。
犯罪者のサイコパシーを測定する20項目のチェックリスト。
主に訓練を積んだ専門家が犯罪者を相手に行う尺度であり、日常で利用するのには不適当です。

PPI-Rとは?
Psychopathic Personality Inventory-Revisedの略。
PCL-Rを通常のコミュニティで利用するのに作られた測定法。
精神病理的な特性を調べることを目的とした自己報告の尺度。

ザックリと次のように覚えておけば十分でしょう。

・犯罪者のサイコパシーを測定するのがPCL-R(他者による診断)
・一般コミュニティの個人のサイコパシーを客観的に測定できるのがPII-R(自己申告)

様々な検証が行われ、データが潤沢で統計調査されているため。

 

「PCL-R」は、現在最も有効であると言われている診断法と言われています。

よくあるサイコパス診断は意味がない

サイコパスをチェックする尺度「PCL-R」「PPI-R」

どちらも訓練を積んだ専門家が行って初めて意味がある方法なので…

 

よくあるサイコパス診断は全くあてになりません!

 

なぜ流行るのか?と言うと、身近なサイコパスが見破れたら安心だからという気持ち。または、自分が変わった人物であるというアピールの為でしょう。

正直に言うと「痛い行為」です。

有効な手段とされるPCL-Rでも訓練を積み資格を得た専門家がきちんとした手順で行ってこそ意味があります。

数問程度のサイコパス診断とは比べ物になりません。

 

同時に、見た目や簡単なクイズでは――

「サイコパシー傾向の高さを見極めるのは困難」ということです。

サイコパスは2種類に分けられる

ここではPPI-Rに基づき、サイコパスを2種類に分けて解説します。
※正確には、強く出ている要素で区別

PPI-Ⅰ型

情緒や対人への対処をコントロールできるタイプ。

理解・判断・論理など知的機能、言語化能力に優れる。

自分の衝動や攻撃性を状況に合わせて抑えられる知的さと狡猾さから他者から魅力的な人物に思われやすい。

「教養を豊かに詰める環境で育った優良児の側面」と「達成感や地位名声を得ようとする野心家の側面」を持っている。

それらに伴い、自分の目標を達成するために手段を択ばない冷徹さと冷淡さ、およびを自己愛性パーソナリティ障害(自己中心的なナルシスト)の要素を持つことが多い。

 

サイコパス傾向が高い人の中で知的能力が高く、社会において犯罪や反社会行動が出ない人が存在する。

その人たちは「ホワイトカラーサイコパス」「成功するサイコパス」と呼ばれている。

PPI-Ⅱ型

前者と真逆で、自身の感情や衝動を状況に合わせてコントロールすることが困難。

自分に直面している問題に対して考えることが出来ず、暴力的・感情的に問題解決を図る人が多い。

逮捕されるような社会的逸脱行為、暴力性、社会通念に従うことの困難(無責任)、自己中心的など、ネガティブな側面が多い。

反社会性パーソナリティ障害者として扱われるのはPPI-Ⅱ型タイプ。

 

前者は「とても合理的で冷静な判断が出来て野心を持っているタイプ」

後者は「暴力的で自分や他人への配慮が出来ないタイプ」

 

一口にサイコパシー傾向が高いと言っても…

強く出ている要素が違うだけで、イメージする人物像は真逆になりますね。

サイコパスの行動はゲームで例えると簡単

ここまで読んで「なぜそういう思考や行動になるのか」疑問に思いますよね?

確かにサイコパスの行動や思考は、一般的に想像しがたいと言われています。

それならば、イメージしやすい環境を考えてみましょう。

 

他者に良心や罪悪感を持たず、責任感を持たなくていい環境…

 

ビデオゲームに似ていませんか?

 

プレイヤーを自分。敵や味方キャラを含んだNPC(他人)とした場合、サイコパスの特徴を言い換えると次のように出来ます。

・良心の欠如 = NPC(他人)をモノとして見る視点
・冷淡で共感しない = 邪魔になるNPCがいたら排除する
・平然と嘘をつく = クリアの為に手段を択ばない
・責任/罪悪感が無い = NPC相手に考える必要が無い
・自尊心が過大で自己中心的 = 自キャラや役立つNPC以外を育成しない
・表面は魅力的 = より良い仲間を集める

ゲームプレイにおいて

レベルアップするためにNPCを倒すことにためらいが無い。

使える味方キャラを育て、使えないキャラを切り捨て、NPCたちを徹底的に利用する。

自分の面白さの為なら、平気で都市や人物を破壊する。

ストレスの要因になるキャラや障害になる敵に対して衝動的、感情的に対処する。

 

ゲーム好きな人にとって、どれも覚えがありそうですね。

自分に理解出来ない思考と行動だと思っていても、誰でも持っているものだとわかります。

サイコパス傾向が高い人は、そのバランスが変わっているだけってことですね。

次は、「よくある偏見と疑問」を見ていきましょう。

サイコパスへの偏見とよくある疑問

サイコパスとソシオパスの違いは?

ソシオパス・サイコパスは一般向けの表現です。

どちらも反社会性パーソナリティ障害(ASPD)として扱われます。

重症度や原因で区別しようとする人がいますが、特に意味はありません。

サイコパスはあくびに釣られない?

あくびしても釣られない人はサイコパス傾向が高いという研究成果がある

あくびの伝染は、人類を含んだ哺乳類の原始的なコミュニケーションで他人との共感を表すと言われています。

サイコパス傾向が高い人ほど「他人への共感性が低いため、あくびに釣られにくい」わけです。

もっとも、あくびに釣られにくいだけなので、明確な判断基準になりません。

サイコパスは嘘つき?

慢性的に嘘をつくわけではありません。

京都大学の「サイコパスが嘘をつく脳のメカニズムに関した研究成果」によるとサイコパス傾向が高い人は「嘘をつく反応速度が速い」とされています。

「本当のことを言うor嘘をつく」と迷う時間がとても少ないってことですね。

また、サイコパス傾向が高くても嘘をつかない人が存在したそうです。

このことから、嘘ばかり言うわけでなく、嘘のつき方が違うだけと言えます。

よくある「サイコパスは頭の回転が速い」というのも葛藤する時間が少ないからなのでしょう。

サイコパスの人は危険?

サイコパス傾向が高い=犯罪者ではない

マーサ・スタウトの「良心を持たない人たち」によれば、アメリカの場合25人に1人(約4%)とされています。

実際の判断は手間がかかるため、正確な数字とは言えませんが、少ないとも言えません。

そして、その人たち全員が犯罪者というわけでなく、むしろ人類にとって有益な人たちが一定層存在します。

そのため、サイコパス傾向と特定個人の思考が似ていても安易に危険人物と扱ってはダメです。

サイコパスは自覚が無い?

自覚が無い場合"も"あります。

面白い事例として、ジェームズ・ファロンという神経科学者が、サイコパスの脳構造を研究していたところ、自身の脳がそれに当てはまってしまったお話しがあります。

彼は誰かを傷つけるような行為は行っていないし、自覚症状は一切なかったそうです。そして、彼は自分自身を研究材料に犯罪性や行動に関した研究を発表しました。

詳しい内容は「サイコパス・インサイド―ある神経科学者の脳の謎への旅」を読んでみましょう。

まとめ

サイコパス傾向の高い人の特徴をまとめてみましたが、いかがだったでしょうか?

巷では人をサイコパス扱いする人が多いですが、気軽に使っていい表現ではありません。

 

また「身近なサイコパスから身を守ろう!」「サイコパスとの恋愛は避けよう」など、危険視する情報も多くありますが…

サイコパス傾向が高く、知能が高い人と付き合うのは自身の利益につながる可能性があります。

…というか、排除しようとすると「障害」と見なされ逆に…ってことがあり得ます。

「自分は役立つ」とアピールして賢く付き合う。または、全力で逃げることが賢い手段でしょう。

 

参考文献
京都大学:サイコパスがためらいなく嘘をつく脳のメカニズムを明らかにしました
日本医事新報者:精神病質者(サイコパス)とは
ToDay:Is that person a psychopath? A yawn might help you tell
精神障害の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)