WHO、ゲーム障害が正式な疾患に!「甘え」では解決しない新しい依存症との付き合い方

香川県の「ネット・ゲーム依存症対策条例(仮称)」の素案。
そして、厚生労働省による「ゲーム依存症対策関係者連絡会議」の開催。
どちらも「ゲーム依存症」を問題視し、人々への健康保持が目的です。
多くのメディアで取り上げられているので一度は聞いたことありますよね。
さて、アナタは「ゲーム依存症」について、どのくらい知っていますか?
今回は「ゲーム依存症とは何か?」「ゲーム依存症とゲーム障害の違い」「ゲーム障害のよくある疑問」について解説していきます。
子供・大人に関わりない現代の疾病なのでぜひ知っておきましょう!
ゲーム依存症は正式な精神疾患になった
昔からゲームのやり過ぎは心身に悪影響があると言われてきました。
なぜ今になって「ゲーム依存症」が注目されるのか?疑問に思うことでしょう。
答えは簡単!
ゲーム依存症が精神疾患として正式に認定されたから!
昨年(2019年5月25日)、WHO(世界保健機関)が「ゲーム障害(gaming disorder)」を精神疾患として正式に認定しました。
改定後の国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)は2022年1月1日に発効されます。
国際疾病分類(ICD)をわかりやすく解説!
ゲーム障害が新たにICDに加わった…?ICDってなんだ!?という人のために出来る限りわかりやすく解説します。
ICDの正式な名称は「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」
「国際的に決められた基準や比較」の統計分類のこと。
「医療機関の診療記録」「医療保険の支払い」などに活用される。
少しわかりにくいので、使われる例をあげてみます。
・患者によって「目がかゆい」「皮膚がかぶれる」と言ったバラバラな症状を一定の基準に沿って分類することで、病名などの整理が容易になり、疾患のデータを統計として活用できる。
・医療保険の支払いに関して、対象は「ICD-10に記載された分類のうち○○の場合のみ」と明確な基準として活用される。
今回のように新しい分類を作れば、それらの情報が管理され何らかの業界で活用できる。
平たく言うと「分類(ICD)があれば、それを基準に色々決められて便利だよね」って話です。
「ゲーム障害が加わって何が変わるの?」と言われそうですが、後の項目でキチンと解説します。
その前に、ゲーム障害とは何か見ていきましょう。
ゲーム障害とは?わかりやすく解説
ゲーム障害は、新たに認定された精神疾患の一つです。
ICD-11に記された、分類と基準は以下の通りです。
記述(Description)
ゲーム症(障害)は、持続的または反復的なゲーム行動(「デジタルゲーム」または「ビデオゲーム」、それはオンラインすなわちインターネット上、またはオフラインかもしれない)の様式(パターン)によって特徴づけられる。ゲームをすることに対する制御の障害(例:開始、頻度、強度、持続時間、終了、状況)。
ゲームに没頭することへの優先順位が高まり、他の生活上の利益や日常の活動よりもゲームをすることが優先される。否定的な(マイナスの)結果が生じているにもかかわらず、ゲームの使用が持続、またはエスカレートする。
その行動様式は、個人的、家庭的、社会的、学業的、職業的または他の重要な機能領域において著しい障害をもたらすほど十分に重篤なものである。ゲーム行動の様式は、持続的または一時的そして反復的かもしれない。
ゲーム行動および他の特徴は、診断するために通常少なくとも12ヶ月の間にわたって明らかである。しかし、すべての診断要件が満たされ症状が重度であれば、必要な期間は短縮するかもしれない。
引用:Wikipedia ゲーム依存症
除外
危険なゲーム行動(Hazardous gaming)
双極症 I 型 <双極 I 型障害>(Bipolar type I disorder)
双極症 II 型 <双極 II 型障害>(Bipolar type II disorder)
ICD-11(https://icd.who.int/en)が分かりやすく訳されていたのでWikipediaを引用しました。
簡単にまとめると
・ゲームの頻度と時間をコントロール出来ず、日常生活に支障が出る
・食事や睡眠などを無視してゲームに没頭する
・健康や仕事に悪影響が出てもゲームがやめられない
この症状が12か月以上続くと「ゲーム障害」と診断される。
※重度の場合、12か月未満でも診断される
つまり「まともな生活が送れないほどゲームに没頭してしまう障害」です。
ちなみに同じ分類に「ギャンブル障害」があります。
ゲーム障害は甘え?依存症との違いは?よくある疑問
ゲーム依存症との違いは?
正確にはゲーム症。または、ゲーム障害が正しい名称です。
日本では一般的に「ゲーム依存症」「ゲーム中毒」と呼ばれていますが、「依存(Dependence)」「中毒(Intoxication)」という用語は専門的に適切ではないので医療機関等では使われない言葉です。
どちらも全く同じ精神疾患を指す言葉です。
家族が徹夜でゲームやっていて心配…
一時的なものならめずらしくありません。
「新しいゲームの発売日から徹夜でクリアを目指す人」「長期休暇で溜まったゲームをプレイし続ける人」は珍しくなく、そのタイプ全ての人がゲーム障害と診断されるわけでは無いです。
長期間に渡り日常生活に支障が生じるレベルで熱中する事が問題なわけです。
日常生活に影響が出るレベル…がよくわからない
ゲームと縁も所縁もない人には想像しがたいと思います。
なので、いわゆる「ネトゲ廃人」だった知人の生活を一例としてどうぞ。
・1日のサイクルが睡眠とゲームのみ
・食事はゲームをプレイしつつコンビニ弁当
・ゲーム漬けで学校を中退
・何よりゲーム優先
以上の生活を3年間送り続けたそうです。
本人は後悔していましたが、当時はどうしてもやめられなかったそうです。
これだけ見ると、著しく日常生活に悪影響が出ているように見えます。
ですが、話を聞くと面白いことに――
睡眠サイクルやゲームに関しての研究の熱意の質は高く、効率的にゲームをプレイするために生活を変えていた。とのことです。
言い方を変えれば、ゲームに対してストイックな生活を送っている状態。
比べて
ゲームで競い合う競技「eスポーツ」で活躍するプロゲーマー。
1日のほとんどをゲーム練習に費やす。でも、自己管理をしっかりとして健全な生活が出来ている。
両者の違いは「優先順位を判断できるか否か」「生活の質」です。
つまり、ゲームをすることが悪いわけでなく、自己管理が出来なくなることが問題である。ってことです。
専門的なことは病院で診断でされるので、思い当たる人は心療内科へ行ってみましょう。
ゲーム障害って甘えだろ?
「甘え」と考えるのは馬鹿げています。
「鬱は甘え」「ゲーム依存症は甘え」とこんな発言をする人は何も理解できていない人です。
どういうことだよ…と思う人もいるでしょうが、ここで冒頭のICDと関係が出てきます。
「ICDで精神疾患と分類される」と言うことは「ゲーム障害のデータを管理し統括し、治療に向けた研究に活用できる」ってこと。
つまり、「甘え」の一言で片づけられない社会問題を様々の観点から治していくことに繋がります。
思考停止した昔ながらの考え or どうにか治して社会復帰させる考えと行為
どちらが健全かハッキリわかりますね。
ゲーム障害と聞くと恐ろしいが…
アメリカ精神医学会(APA)では、ゲームを熱中しすぎてしまうゲーム障害を精神疾患として分類することは証拠が不十分で早計である。という意見があります。
テレビゲーム・ビデオゲームが普及してから日が浅く、鬱や情緒不安定と関係があるか十分な証拠が無く確信が持てないため、一部の研究者は「ゲーム障害は精神疾患ではない」と言っているわけです。
ゲーム障害は、いまだ研究中の症状であり、専門家の間でも意見が割れています。
「自分の子供をゲーム障害にしたくない!」と考える人は多いでしょう。
精神疾患=頭がおかしい人と思い込んでいる人も少なくありません。
しかし!
「ゲームは絶対禁止!」「根拠のない言葉による制限」「体罰による指導」等はやめておきましょう。
精神疾患の多くは、病人のケアを間違えることで家庭崩壊や多数の問題が発生する可能性が高いです。
重度化して手遅れになる前に、 まずは心療内科や精神科へ行って専門家の知識を頼りましょう。
参考文献
厚生労働省:ゲーム依存症対策関係者連絡会議を開催いたします
WHO(世界保健機関):ICD-11 International Classification of Diseases 11th Revision
東京新聞:「ゲーム障害」は依存症 WHO承認 22年施行、治療期待
日本経済新聞:ゲーム依存は病気 WHO、国際疾病の新基準
ハートクリニック:『ICD-11』(国際疾病分類 第11版)の登場で何が変わる?
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません